はじめに – 医療従事者の労働環境と家族への影響
こんにちは、えりかです。
【重要】この記事について
本記事は、我が家の個人的な体験談であり、すべての医師家庭に当てはまるものではありません。医療従事者の労働環境や家族への影響について検討される際は、必ず専門家(産業医、カウンセラー、労働問題専門家等)にご相談ください。
前回の記事では、夫が勤務医からフリーランス医師になった経緯をお話ししました。今回は、勤務医時代の夫の激務ぶりを家族目線でリアルにお伝えします。
「医者って激務だよね」とよく言われますが、実際どれほど大変なのか、家族として間近で見てきた私だからこそ語れる現実があります。
この記事で分かること
- 勤務医の1日の実態とスケジュール
- 家族が感じた医師の激務の影響
- 医療現場で働く家族を支える心構え
- 激務が家族関係に与える具体的な問題
- 医療従事者の働き方改革の必要性
これから医師と結婚を考えている方や、現在医師の家族として頑張っている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
勤務医時代の夫の1日を完全公開
朝5時30分:静かな出勤準備
夫の1日は、まだ家族が寝ている早朝から始まっていました。
🌅 朝のルーティン(平日)
- 5:30 起床(音を立てないよう細心の注意)
- 5:45 シャワー、身支度
- 6:00 朝食(前日の残り物を電子レンジで温める)
- 6:15 家を出発
- 6:45 病院到着、1日のスケジュール確認

朝は本当に静かに準備してくれていました。でも起きてる私は『おはよう』『頑張ってきてね』しか言えなかったです
朝7時:手術室での長い1日がスタート
病院に着いてからの夫のスケジュールは、まさに分刻みでした。
⏰ 病院での1日(麻酔科医の場合)
7:00-8:30:手術準備、患者さんの術前診察
8:30-12:00:午前の手術(1-2件)
12:00-13:00:昼休み(実際は資料作成で休憩なし)
13:00-18:00:午後の手術(2-3件)
18:00-20:00:術後管理、カルテ記入
20:00-22:00:翌日の手術準備、勉強会参加



『お疲れさま』のメールを送っても、返事が来るのは深夜。それも『まだ病院なんだ。先寝ておいてね』という短いメッセージだけでした
夜22時以降:やっと帰宅、でも休息なし
夫が帰宅するのは、いつも子どもが寝た後でした。
🌙 帰宅後のルーティン
- 22:00-22:30 帰宅、遅い夕食
- 22:30-23:30 お風呂、翌日の準備
- 23:30-0:30 医学書で勉強、学会資料作成
- 0:30 就寝



帰ってきても疲れ切っていて、会話もほとんどありませんでした。『今日どうだった?』と聞いても『疲れた』の一言で終わり…
緊急時の現実:24時間体制の医療現場
深夜の緊急手術への対応
勤務医時代で一番辛かったのは、緊急手術の呼び出しでした。
📱 緊急呼び出しの実態
- 頻度: 月に3-4回は必ずある
- 時間帯: 深夜0時〜朝方4時が多い
- 所要時間: 3-6時間(手術内容による)
- 翌日: 通常勤務(休むことはできない)
印象的だった出来事
ある日の深夜2時、夫の携帯が鳴りました。交通事故による緊急手術でした。



緊急手術が入った。朝まで帰れないと思う



また…こどもに『パパは?』って聞かれたら、なんて言おう
結局、その手術は朝の8時まで続き、夫はそのまま通常勤務。家族が起きる時間には、もう次の日の仕事が始まっていました。
休日も学会・研修で多忙
休日も決してゆっくりできませんでした。
📚 休日の実態
- 学会出席: 月1-2回は土日に県外出張
- 院内研修: 日曜日の午前中は勉強会
- 資格更新: 年に数回、宿泊を伴う研修
- 論文作成: 家にいても書斎にこもって作業



パパはいつお休みなの?僕と遊んでくれないの?
この言葉を聞いた時、私も夫も言葉に詰まりました。
家族が感じた医師の激務の5つの影響
影響①:完全なワンオペ育児状態
夫の激務により、育児は完全に私一人の責任になりました。
😰 ワンオペ育児の現実
- 保育園の送迎: 100%私が担当
- 夜泣き対応: 夫は翌日の手術があるため私のみ
- 子供の病気: 仕事を休むのはいつも私
- 習い事の送迎: 土日も夫がいないため私が対応
- 学校行事: 父親の参加は期待できない状態



元看護師だから医療現場の忙しさは理解していましたが、いざ家族になると『ちょっと手伝って』が言えない環境でした
影響②:夫婦のコミュニケーション減少
一番辛かったのは、夫婦の会話がほとんどなくなったことです。
会話の変化:
- 結婚当初: お互いの仕事の話、将来の夢など
- 勤務医時代: 「疲れた」「忙しい」だけの会話
- 現在: 30分以上じっくり話せる時間がある



夫婦なのに、まるで同居人のような関係になってしまって…寂しかったです
影響③:子供たちの父親との関係性
長男にとって、父親は「いつも忙しい人」でした。でも同時に、特別な存在でもありました。
👶 長男の心境の変化
- 2歳頃:「パパはスーパーマン」という憧れ
- 3歳頃:「パパは忙しすぎる」という寂しさ
- 現在:穏やかな父親との時間を満喫
印象的なエピソード
長男が2歳の時、家族でお出かけ中に道端で倒れているご年配の方を発見。夫は迷わず一目散にその方のもとに走っていき、救急車が来るまで付き添いました。



パパはスーパーマンだね!スーパーマンだから、お出かけできないのは仕方ないよね



この子は父親のことを本当に誇りに思ってるんだと感動しました。でも同時に、2歳の子供が「仕方ない」と諦めていることに胸が痛くもなりました
兄弟で異なる父親との関係性
実は、長男が3歳の時には既に夫はフリーランスになっていたので、次男(現在5歳)は穏やかな生活しか知りません。兄弟でも全く違う「父親像」を持っているのが興味深いところです。



パパ、行ってらっしゃい!命守ってね!



この言葉を聞くたび、胸が熱くなります。次男にとって、パパが人の命を救うお仕事をしているのは当たり前のこと。でも5歳なりに「命を守る」という言葉の重みを理解している姿に、成長を感じます
影響④:妻自身の体調とメンタルへの影響
ワンオペ育児と夫への気遣いで、私自身も限界に近づいていました。
😵 私の体調・メンタルの変化
- 体調面: 慢性的な寝不足、頭痛、肩こり
- 精神面: イライラしやすくなる、孤独感の増大
- 社交面: ママ友との交流も億劫になる
- 趣味: 自分の時間が全くない状態
- 自己肯定感: 「私は育児も何もできていない」という思い込み



夫も大変なのは分かっているから、弱音を吐けなくて…でもストレスが溜まると、つい夫に当たってしまって。その後の自己嫌悪がまた辛くて、悪循環でした
影響⑤:家計管理の課題
忙しい夫に代わって、家計管理も私の担当になりましたが…
💰 家計管理の実態
- 家計簿: つけたことがない(今でも苦手)
- 貯金: 計画的な貯蓄ができていない状態
- 投資: 全く手をつけていない
- 将来設計: 話し合う時間がない



夫から『家計は任せる』と言われていたのに、実際は何もできていませんでした…お金のことを一人で決めるのは不安だし、夫に相談する時間もないし…完全にお手上げ状態でした
医療現場で働く家族を支える3つの心構え
激務の夫を支えてきた経験から、医療従事者の家族が持つべき心構えをお伝えします。
【注意】 以下は個人の体験に基づくアドバイスです。家族の状況や医療従事者の労働環境は個々に異なります。深刻な問題がある場合は、専門のカウンセラーや労働問題の専門家にご相談ください。
心構え①:完璧を求めすぎない
医療従事者の家族は、どうしても一人で多くのことを担う必要があります。
🎯 完璧を手放すポイント
- 家事: 手抜きできるところは徹底的に手抜き
- 育児: 「今日はテレビに頼ってもいい日」を作る
- 人間関係: すべての付き合いに参加する必要はない
- 自分時間: 週に1時間でも自分だけの時間を確保



完璧な医者妻を目指して疲れ果てるより、家族みんなが笑顔でいることの方が大切だと気づきました
心構え②:感情を溜め込まない
一人で抱え込まず、感情を外に出すことも必要です。
推奨する発散方法:
- 信頼できる友人への相談: 医療従事者の家族同士のつながり
- 日記やブログ: 気持ちを文字にする
- 運動: ウォーキングやヨガで体を動かす
- 趣味: 短時間でもできる好きなことを見つける
心構え③:長期的な視点を持つ
激務の時期は永続的ではありません。
📅 長期的な視点のポイント
- キャリアの段階: 若手医師の激務は一時的なもの
- 専門性の蓄積: 激務の経験が将来の選択肢を広げる
- 家族の成長: 子供たちもいずれ理解してくれる
- 働き方の変化: 医療現場も働き方改革が進んでいる
激務が家族関係に与えた具体的な問題と対策
問題①:夫婦の価値観のズレ
一緒に過ごす時間が少ないと、夫婦の価値観にズレが生じます。
具体的なズレ:
- 子育て方針: 厳しく育てるか、のびのび育てるか
- お金の使い方: 何を優先して購入するか
- 将来設計: 住宅購入のタイミング、教育方針など
対策:
- 短時間でも定期的な夫婦会議の時間を作る
- メールやLINEで日常的にコミュニケーションを取る
- 重要な決定は一人で決めず、必ず相談する
問題②:子供の父親への複雑な感情
父親の不在が続くと、子供たちも複雑な感情を抱くようになります。
👶 子供たちの心境
- 寂しさ: 「なぜパパは遊んでくれないの?」
- 誤解: 「パパは僕たちより仕事が大切なの?」
- 諦め: 「パパに頼んでも無駄」という気持ち
- 母親への過度な依存: すべてを母親に求める
対策:
- 医師としての使命感を年齢に応じて説明
- 短い時間でも濃密な時間を過ごす工夫
- 父親からの愛情を言葉で伝える機会を作る
問題③:妻の孤独感とストレス
一人で家庭を支える責任の重さは想像以上でした。
😔 妻が感じる孤独感
- 決断の重圧: すべてを一人で決める責任
- 相談相手の不在: 夫に相談できない環境
- 理解されない辛さ: 「医者の奥さんでいいね」という周囲の目
- 将来への不安: この生活がいつまで続くのか
対策:
- 医療従事者の家族同士のネットワーク作り
- 定期的なカウンセリングの利用
- 一時的でも育児サポートの活用
医師の激務の背景と社会的意義
激務の背景にある使命感
夫の激務を間近で見て感じたのは、医師としての強い使命感でした。
💬 夫がよく言っていた言葉:



患者さんの命を預かっている責任は、他の仕事では味わえない重圧がある
🏥 医師が抱える責任
- 命に関わる判断: 一瞬の判断ミスが患者さんの生死を分ける
- 24時間体制: 緊急時はいつでも対応する覚悟
- 継続的な学習: 医学の進歩に遅れをとってはいけない
- 同僚・チームへの責任: 医療はチームワークが不可欠
社会への貢献という誇り
激務でも続けられるのは、社会への貢献を実感できるからです。
患者さんからの感謝:
- 手術後の「ありがとうございました」の一言
- 回復された患者さんの笑顔
- 同僚からの信頼と評価



大変そうな夫でしたが、患者さんから感謝された日は、本当に嬉しそうな表情をしていました
医療従事者の働き方改革の必要性
現在、医療業界でも働き方改革が進められています。
改革のポイント:
- 医師の労働時間上限の設定
- タスクシェアリングの推進
- ICT技術の活用による効率化
- メンタルヘルス対策の充実
よくある質問(FAQ)
【注意】 以下のQ&Aは我が家の体験に基づくものです。医療従事者の労働環境や家族への影響について具体的な対策を検討される際は、専門家にご相談ください。
Q1. 医師の激務はいつまで続くの?
A1. 専門医取得までの若手時代(20代後半〜30代前半)が最も激務とされています。その後は勤務先や専門科によって働き方を選択できるようになる場合が多いです。ただし、個人差があります。
Q2. 医師の家族として心がけることは?
A2. 我が家の経験では、完璧を求めすぎず、家族が笑顔でいることを最優先にすることが大切でした。また、医師本人の使命感を理解し、長期的な視点で支えることも重要です。ただし、家族の心身の健康を害するような状況では専門家への相談をお勧めします。
Q3. 子供への影響はどう軽減すれば良い?
A3. 我が家では、医師としての使命感を年齢に応じて説明し、短い時間でも濃密な時間を過ごす工夫をしました。兄弟でも父親との関係性が全く違うことがあります(長男は激務時代を、次男は穏やかな生活しか知りません)。子供の精神的な影響が心配な場合は、児童心理の専門家にご相談ください。
Q4. 妻のストレス発散方法は?
A4. 医療従事者の家族同士のつながりを作る、短時間でもできる趣味を見つける、完璧主義を手放すことが効果的でした。ただし、深刻なストレスや体調不良がある場合は、カウンセラーや医師にご相談ください。
Q5. 医師の激務は改善されていくの?
A5. 現在、医療業界でも働き方改革が進められており、労働時間の上限設定や業務効率化が図られています。ただし、医療の性質上、完全な改善には時間がかかると考えられます。
まとめ:医療従事者家族の現実と希望
医師の激務を家族目線で見た現実をお伝えしました。
正直に言うと、勤務医時代は本当に大変でした。ワンオペ育児、夫とのコミュニケーション不足、子供たちの寂しさ…家族全員が何かを我慢している状況でした。
📝 この記事のポイント
- 🏥 医師の激務は家族全体に大きな影響を与える
- 👪 完璧を求めすぎず、家族の笑顔を最優先に
- ⏰ 激務の時期は一時的、長期的な視点が大切
- 💪 医師の使命感を理解し、家族で支える覚悟が必要
- 🔄 医療業界の働き方改革にも期待
しかし、この経験があったからこそ、現在のフリーランス医師としての夫の働き方の価値を深く理解できています。また、医療従事者の社会的な責任や使命感についても、身をもって学ぶことができました。
現在医師の激務に悩んでいる家族の方へ
今は辛い時期かもしれませんが、その経験は必ず家族の絆を深め、将来の選択肢を広げてくれます。一人で抱え込まず、同じような境遇の家族とのつながりを大切にしてください。



激務を経験した家族だからこそ、本当の幸せの形が見えてくると思います。今頑張っているあなたを、心から応援しています!
重要なお知らせ
もし家族の心身の健康に深刻な影響が出ている場合は、以下の専門機関への相談をお勧めします:
- 産業医や職場の健康管理担当者
- 心理カウンセラー
- 労働問題の専門家
関連記事・次回予告
次回は「育児が嫌いな母親の正直な気持ち」について書きます。完璧な母親像に疲れ果てた私の本音と、医者パパの育児参加がもたらした変化について詳しくお話しする予定です。
今後の記事予定
- 勤務医からフリーランス医師になった夫を妻が語る
- フリーランス医師の働き方が家族に与えた変化(投稿予定)
- 育児が嫌いな母親の正直な気持ち(次回投稿予定)
- 医師家庭の教育費と家計管理のコツ(投稿予定)
【免責事項】
本記事の内容は個人の体験談であり、医学的・心理学的アドバイスではありません。医療従事者の労働環境や家族の健康問題に関する判断は、専門家への相談の上で行ってください。記事内容による損害について当方は責任を負いかねます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!同じような状況の方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントで体験談をシェアしてくださいね。
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